加熱が不十分だと何が怖いの？

牛肉を調理する際は腸管出血性大腸菌 O157食中毒に注意が必要です。 牛肉の場合、菌は肉を切った表面についており、肉の中にはいません。しかし、冷蔵保管が長くなって肉の熟成が進むと菌が表面から内側に入っていきます。また包丁で切れ目を入れたりすることによっても菌が内側に入り混むこともあります。

ですので、ローストビーフの内部が加熱不足だと肉の中にいる可能性のある菌が死滅せずに食中毒が起こることがあります。腸管出血性大腸菌 O 157に感染すると激しい腹痛や下痢、発熱、嘔吐などを起こします。 また、重症化や死に至る場合もあります。

ローストビーフの中心温度

食中毒を起こさないためにはローストビーフの中心をしっかりと加熱することが条件だとわかりました。ではどのくらい加熱すれば良いのでしょうか。

腸管出血性大腸菌は肉の中心の温度が75度になっている状態を1分間以上の加熱で死滅します。しかしその温度で加熱すると、ローストビーフにしっかりと中まで火を通すことができますが、お肉が固くなって美味しくなくなってしまいます。

ローストビーフは特定加熱食肉製品に分類される中心部の温度を63°で30分間加熱する方法、またはこれと同等以上の効力を有する方法による加熱殺菌を行った食肉製品です。
厚生労働省ホームページより引用

本来、お肉についている菌を殺菌するには、肉の中心の温度が75度になっている状態を1分間以上の加熱で死滅させるか、75度で1分間以上の加熱と同等の加熱条件を加熱する必要があります。

75度で1分間以上の加熱と同等の加熱条件
・70度で3分
・69度で4分
・68度で5分
・67度8分
・66度11分
・65度15分
・63度30分

しかし、ローストビーフは特定加熱食肉製品に分類されており、下記の条件となっています
・56度　64分
・57度　43分
・58度　28分
・59度　19分
・60度　12分
・61度　9分
・62度　6分
・63度　瞬時
厚生労働省ホームページより引用

これは事業者がローストビーフを製造販売する場合に安全を守るための規格なので、家庭でもそれを元に作ると安全を守ることができます。
例えば、牛もも肉（ブロック約300g 厚さ約4cm）を低温調理でローストビーフを作る場合

お肉を58度のお湯に入れた時、お肉の中心温度が58度まで上がるのに100分程かかります。このままでは加熱殺菌はされません。そのまま中心温度が58度であれば、上記の表ではさらに28分かけて加熱殺菌します。
なので、58度の低温調理でローストビーフを作る場合は、肉の中心温度が上がるのに100分、さらに28分の温度を維持することでローストビーフを安全に食べることが出来ます。63度だと瞬時とありますが、低温調理で加熱する食材は中心温度がその温度に到達するまでに時間がかかります。
ローストビーフを柔らかくするためには55度から65度での低温調理をする必要があるので、その温度にあった時間を加熱しましょう。
加熱する温度が低い場合は時間を長くする必要があります。

安全な作り方

安全に作るための中心温度と時間を説明しました。
しかし、ローストビーフを作る際に肉の中心部分が何度になっているかはわかりませんよね。そこで使って欲しいのがクッキング温度計です。
先端に金属の針（プローブ）が付いており、温度を計りたい食材に刺すことで温度を図ることができるものです。
使い方はローストビーフをしばらく加熱してから、中心温度計をお肉の中心部に刺し、ローストビーフの温度を確認します。
ローストビーフが柔らかくできる温度になっていたら、その時点からその温度を保ったまま上記で説明した時間を測ってください。
中まで加熱されているか見た目では判断がつかないため、このような調理器具を使うのは有効です。

今回は食中毒など少し怖いことをお話ししました。料理は科学です。しっかりレシピに基づいて調理すればローストビーフは安全に食べることができます。
そのために必要な中心温度の管理方法について紹介しました。おもてなしで食べることが多いローストビーフ。安全においしく食べて、楽しい食事にしてください。